中小企業の経営者であれば、絶対に知っておくべきなのが「日本政策金融公庫」(略称:日本公庫)の存在です。本社は東京の大手町にあり、日本政府が100%出資している2008年設立の政策金融機関となります。
前身となる組織は国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫で、業務もそれらの組織から引き継いだ「国民生活事業」、「農林水産事業」、「中小企業事業」が中心です。ここでは、「中小企業事業」について解説していきます。
1:融資業務とは?
中小企業にとって心強いのが、この「融資業務」でしょう。事業に必要な資金を確保するため、長期固定金利での事業資金の貸し付けを行っています。「中小企業事業」の窓口に行けば、融資の相談にのってくれます。「事業計画書」や「決算書」などの資料をもって、相談にいきましょう。
1-1 融資の流れ
相談をして実際に融資が可能なようであれば、より事業計画を知るために日本政策金融公庫 の担当者が来社して審査を行います。融資決定までの期間は、2週間程度とされていますが、場合によっては1か月以上かかるケースもあります。融資は、企業の運転資金や設備資金などに利用することができます。
ちなみに、有期限度額はほとんどの業種の企業で利用できる「普通貸付」で4,800万円(特定設備資金は7,200万円)と設定されています。
1-2 メリット
・低い金利
日本政策金融公庫から融資を受ける際のメリットは、その低い金利にあります。年0.15%~2%台まで、組み合わせによって変動します。銀行に比べて低い利率で融資を受けられるので、リスクも抑えられます。
・固定金利
固定金利であるため、時間が経過しても返済額が変わりません。また最長20年という長期返済が可能なのも魅力です。特に起業して間もない会社にとっては、借入負担が少ないのは大きなメリットとなります。
・審査に通る可能性が高い
さらに、審査に通る可能性も、一般の銀行に比べると高くなります。通常、中小企業の場合、経営状態が良いことが明らかでなければ、銀行における融資の審査に通る可能性は低いでしょう(実績があり、会社規模が大きければ別ですが)。
・起業したばかりでも融資してもらえる
起業したばかりの時は実績もなく、これから業績を上げていくのですから、経営状態は厳しくて当たり前です。しかし日本政策金融公庫は、こうした中小企業が抱える資金不足問題をサポートするのが役割なので、銀行からの融資が期待できないという時はぜひとも相談してみましょう。新規事業はもちろん、一度傾きかけた会社を再建する際にも相談相手になってくれます。
1-3 デメリット
ただし、最初から返済が難しそうな企業には当然貸してくれません。書類の内容も厳しく審査されますし、経営者としての信頼性も問われます。日本政策金融公庫としても、より地域を発展させ雇用を創出してくれる経営者に融資をしたいのです。
反面、日本政策金融公庫の審査に通ると、信用が増して他の金融機関からの融資を受けられる可能性も上がります。
平成28年3月31日時点では、4万5千社が日本政策金融公庫の融資制度を利用しています。1社あたりの平均融資金額は1億6百万円になっており、平均の融資期間は7年間でした。半数は製造業ですが、サービス業や物品販売業でも利用されています。
2:起業時に事業のアドバイスを受けられる
日本政策金融公庫の方針として、「お客さまの立場に立って親身に対応し、身近で頼りになる存在を目指す」「コンサルティング機能・能力の充実を図ることでサービスの質を向上させる」というものがあります。
実際、日本政策金融公庫では、資金調達を含めた事業の悩み事に対して親身に相談にのってくれます。
2-1 相談方法
日本政策金融公庫の相談窓口(サポートデスク)は全国で152支店あり、無料で相談可能です。特に予約も必要ありません。
例えば「まだ起業するかどうか迷っているけれど、アイデア段階で誰かに相談したい」といった際に、話を聞いてもらうことも可能です。その場合、事業計画書の作成や様々な手続き、融資制度の案内といったものまで教えてくれます。起業にあたっての資格や許認可など、知らなかったでは済まされないような内容も事前に把握できます。
全国の支援機関や商工会議所でも出張相談が行われています。支店が遠くて活用しにくい場合は積極的に申し込んでみましょう(予約制)。
3:信用保険業務とは?
中小企業における資金調達支援のため、信用保証協会が実施している借入にかかわる債務保証について、保険の引き受けを行ってくれています。企業側は社債を発行し、金融機関から資金を調達しています。
その際に、債務の保証人が必要になりますが、その役割を日本政策金融公庫が担ってくれるのです。金融機関からすると、こうした信用保険を信用保証協会を介して日本政策金融公庫が担ってくれることで、企業に対して貸し出しを行うリスクを抑えられます。
もし、中小企業が金融機関に対して借り入れたお金を返済できない場合は、信用保証協会が代わりに金融機関に代位弁済を行います。その場合、日本政策金融公庫が信用保証協会に対して保険金を支払うことになります。お金の返済に関しては、その後は中小企業が信用保証協会に対して行っていきます。
こうしたバックアップ業務によって、中小企業における金融機関からの資金調達が円滑になります。この信用保険業務を利用している会社は、平成28年3月31日時点で136万社にも及びます。1企業当たり平均保険引き受け額は1,700万円。平均の保険期間は4年10ヶ月となっており、こちらは様々な業種で利用されています。
このような信用保険業務は、まさしく中小企業や金融機関に対するセーフティネット的な役割を担います。しかし、景気が悪くなり企業の業績が悪化すると、日本政策金融公庫が負担する保険金額も増大してしまいます。
実際に中小企業が信用保険を利用する際は、企業から金融機関を経由して信用保証協会に申し込みを行います。そのため、日本政策金融公庫の存在はあまり意識しないかもしれませんが、陰ながらリスクを背負ってくれています。
まとめ
日本政策金融公庫は、中小企業や創業間もない企業にとって強い味方になってくれる存在です。ただし、一般の金融機関と比べて審査に時間がかかるので、融資を受けたい場合は時間的な余裕は確保しておきましょう。