経営者は融資について知らなすぎる?
経営者と言うと、会社の実務から業界の動向、はたまた経済・社会から文化・歴史まで幅広い知見を備えた人が多いのは事実。ただし誤解を恐れずに言うと、こと「融資」に関してはあまりにも無知な方が多いように思えます。
ご自分のビジネスで考えてみればお分かりの通り、交渉相手が何の知識も持たない素人の場合と、しっかりと理論武装と準備をしているプロの場合、どちらが手強い相手となるでしょうか?言うまでもありませんね。もちろん後者です。
融資の交渉相手となると主に銀行員ですが、彼らも組織の一員です。自行に有利なように話を進めようとするのは当然のことでしょう。そんな彼らと対等に融資交渉を進めるには、経営者側にもそれなりの理論武装をしておく必要があるのです。
私のクライアント様の中にも、あまりにも銀行の言いなりになっていたり、逆に銀行に嫌われて融資を受けられなかったりというケースを散見します。銀行の担当者が考えていることを知り、そして自社の有利になるように話を運ぶためには、融資についてある程度知らなければ話にならないのです。
ただし、あくまでも融資を受けることが目的で、彼らを「打ち負かす」ことが目的ではないということは理解しておきましょう。ここでは銀行との有利な「出会い方」について見ていきます。
目次
- 1 経営者は融資について知らなすぎる?
- 2 銀行へのアプローチ方法は4つある
- 2-1 取引のある銀行の担当者へ相談を持ちかける
- 2-2 新たに銀行の窓口へ相談に出向く
- 2-3 紹介してもらう
- 2-4 営業を受ける
- 3 事前に動いておくことが大事
- 4 今回のまとめ
銀行へのアプローチ方法は4つある
まず、銀行へのアプローチ方法から確認していきましょう。
・1 取引のある銀行の担当者へ相談を持ちかける
・2 新たに銀行の窓口へ相談に出向く
・3 紹介してもらう
・4 営業を受ける
大きく分けるとこの4つが、銀行への最初のアプローチとなります。順番に見ていきましょう。
1 取引のある銀行の担当者へ相談を持ちかける
融資を申し込むわけですので、まずは日頃から取引のある銀行の担当者へ相談することを思い浮かべる方が大半でしょう。何と言っても、銀行は「前例主義」の組織です。
全く新たな会社との付き合いは慎重になりますが、これまで付き合いをしてきた会社であれば追加の融資はそれだけ受けやすいはずです。
ただし銀行の格付で「要管理先」以下の格付を受けている場合は、まず相談を受けてもらえません。その場合は、まず自社の格付を上げるところから始めましょう。
もし既に取引のある銀行に、特に滞納やリスケジュールもなく順調に返済を続けていて、しかも「債務超過」に陥っておらず、「決算書」も特に悪い内容でなければ、追加の融資をしてもらえる可能性は十分にあると言えるでしょう。
2 新たに銀行の窓口へ相談に出向く
実はこの方法、あまりオススメできません。銀行の立場に立てば、これまで付き合いのない会社の社長が突然窓口へ訪れても、第一に「資金繰りに困っているのかな」と勘ぐってしまうものです。
もちろん、その時の相談内容や財務諸表の内容、社長の態度・話し方によっては信頼を勝ち取れる可能性もあります。しかし、一般的に直接銀行の窓口へ出向くのは、融資を受ける方法として賢い方法とは言えないでしょう。
3 紹介してもらう
紹介と言っても、単に友人の伝手を頼るわけではありません。融資を受けたいと思っている銀行と「取引のある会社の社長」さんや、または「税理士」からの紹介がベストです。
銀行は、決算書の数字だけを見て融資を進めているのではなく、社長の人柄や、担当者との信頼関係などの定性的な部分も大きな判断材料にしています。
そうした観点から見れば、信頼関係のある社長さんや税理士からの紹介は、最初から少し近しい立場で話ができるので、融資の話が進みやすいのです。
ちなみに税理士からの紹介の場合でも、銀行から信頼のある税理士でないと難しいでしょう。特に、過去にクライアントの粉飾などに加担していた税理士は、銀行のブラックリストに載ってしまっていることもありえます。
そのような税理士からの紹介だと、逆に融資が通らなくなる可能性さえあるのです。ではどのような税理士がオススメかと言うと、銀行からお客様のご紹介を受けている税理士です。
というのも、銀行は信頼していない税理士には紹介をしないので、銀行からクライアントを任されるということは、銀行から信頼を得ている証拠なのです。
4 営業を受ける
考えたことのない方も多いでしょうが、銀行からスムーズに融資を勝ち取るには、実はこの「営業を受ける」という方法がベストです。銀行の営業マンも、新規取引先の開拓を使命としています。この点は一般企業と同じ。
では銀行の営業マンは、何を情報源として営業をしているのでしょうか?それは「帝国データバンク」から提供されるデータです。
もちろん銀行によって他のソースを使うこともありますが、帝国データバンクからの情報は多くの銀行で営業先リストの作成に利用されています。銀行はこのような企業情報を元に、営業先を選定しているのです。
営業先として白羽の矢が立つと、こちらから動かなくても銀行の方から融資の話を持ちかけてくれるようになります。もちろん、スムーズに融資の話が進みやすいことは間違いありません。
事前に動いておくことが大事
銀行から営業を受けるのがベストな方法だとしても、「そんなに余裕があるならそもそも融資なんて考えないよ」という反応が返ってきそうです。しかしそれは違います。融資を会社側の都合だけで考えてはいけないのです。
長期的に、戦略的に動くことが何より大事だといえます。「銀行の営業対象となるように動いておく」ということが、結果として融資を受けやすい会社となる近道だということを忘れないでください。
その場しのぎで「資金が足りなくなったから、今すぐにいくらか借りたいんだけど…」という相談が多いのですが、これでは銀行側も貸しにくいでしょう。
もし借りられたとしても、遠くない時期にまた資金が不足することが目に見えています。そうならないためにも、『資金繰り表』や『経営計画書』が必要になるのですが、それは次回以降にお話します。
今回のまとめ
経営者が融資について無知であることが多い。しっかり理論武装して、 長期的に準備をしていくことが必要。
銀行へのアプローチ方法は4つある。
・1 取引のある銀行の担当者へ相談を持ちかける
・2 新たに銀行の窓口へ相談に出向く
・3 紹介してもらう
・4 営業を受ける
銀行からの「格付け」に問題がなければ、取引先銀行へ相談を持ちかけてみる。銀行の窓口へいきなり出向くのは、あまり賢い方法とは言えない。紹介を受ける税理士は「銀行から信頼を得ている」税理士がベスト。銀行から「営業先」として選ばれることが、融資への近道。