今回は、前回に引き続き法人税の節税対策をお話ししたいと思います。
担当は、税理士事務所 TMコンサルティングの副所長の桒原(くわばら)です。
(1)少額減価償却資産の一括損金算入の規定による節税
使用可能期間が1年未満、又は取得価額が10万円未満の減価償却資産は一括で費用にすることができます。また、中小企業者等については、一定の要件のもと、取得価額が30万円未満である減価償却資産についても一括で費用にすることができます。
例えば、事業年度の最後の月に車両300万円を購入した場合には、減価償却を選択すると月割計算となり、費用にできる金額は72ヶ月分の1ヶ月となります。
取得価額300万円×0.333(6年)×1月/12月=減価償却費83,250円
このように、実際に費用計上できる金額はとても少なくなります。
これに比べ、30万円未満の資産であれば、事業年度の最後の月に購入した場合であっても、その購入価額の全額を一括で費用にすることができます。
節税を考える時期はだいたい事業年度末あたりが多いので、非常に有効な節税策となります。ただし、この規定が受けられる資産の合計額は年間300万円までです。
(2)修繕費の計上による節税
修繕費は一時の経費となりますが、修繕と考えていたものであっても、一定のものは税務上、資産として計上し(減価償却を行って)、数年をかけて経費に落としていく必要があります。これを資本的支出といいます。節税を考える上では、支出時に全て経費に落とすことができる修繕費とすることが重要です。なるべく資本的支出にならない支出内容にすることが節税につながります。
☆資本的支出と修繕費の違い
資本的支出とは、その固定資産の使用可能期間を延長させたり、その固定資産の価値を増加させたりする支出をいいます。
これに対し、修繕費とは資本的以外の支出、つまり固定資産の現状回復や現状維持の
ための支出をいいます。
事例【ビル外壁の塗装費用】
当社所有のビルの外壁の汚れが目立つので塗装工事を行うことにして見積をとったところ、足場掛け工事費300万円、塗装工事費800万円、計1,100万円が必要であることが分かった。なお塗装材は現在ビルに施してある壁面塗装材と、ほぼ同質のものが使用されることになっている。
⇒ 足場代を含め、1,100万円全額を修繕費として損金処理することができる!
(3)未払費用の計上
決算日までに支払っていない費用であっても、決算日までの期間にかかるもので債務として確定しているものは、未払費用として当期に費用処理することができます。具体的には、以下のようなものがあります。
① 社員給与
20日締め25日支給の場合、21日から決算日までの期間に対応する部分の金額は、未払費用として計上することができます。ただし、役員報酬は、会社の業務執行を包括的に委任される契約であるため、このような日割りによる未払計上は認められません。
② 社会保険料
社会保険料は、当月分について翌月末までに納付するのが普通ですから、例えば3月分については4月末までに、従業員負担分と事業主負担分を合わせて納付することとなります。よって3月決算の会社であれば、3月分の事業主負担分の社会保険料は未払費用として計上することができます。
③ 固定資産税等
法人税法上、固定資産税(不動産取得税・自動車税)を経費にするタイミングは、次のいずれかを選択できます。
1)実際に納付した日
2)納期の開始日
3)賦課決定のあった日
一般的に、1)で処理している法人が多いのではないでしょうか。しかし、3)の方法によれば、賦課決定があった年度に、その年度の固定資産税の全額を未払計上により経費とすることができます。例えば東京都23区内の場合、毎年6月に賦課決定の通知が行われます。この場合、6月決算であれば通知のあった全額を未払計上できます。ただし、継続して同じ処理方法を選択する必要があります。利益の状況によって処理方法を頻繁に変更するのは問題があります。
(4)決算賞与による節税
通常、夏・冬に賞与を支給している場合でも、業績が良い場合は、決算月に決算賞与を支給することで節税をすることが出来ます。
決算月に大きな売上が計上されたが、入金は翌月の場合など、決算月の資金繰りが厳しい場合も考えられますが、決算賞与は、下記の条件を満たすと、決算月の翌月の支給であっても、決算月の経費として処理することが可能です。
① 決算日までに賞与の支給額が従業員ごとに確定していて、その支給金額を従業員に通
知していること
② 実際の支給日が、決算日の翌日から1ヵ月以内であること
③ その支給額を、その決算期に損金計上していること
なお、源泉所得税の預り金については、賞与支払い時に発生するので、未払計上する必要はありません。
具体的には下記のものを用意しておきましょう。
「賞与支給明細書」
「従業員に通知した確認書」
→従業員に日付・名前を自署、押印してもらうとなお良い。
ただし、役員に対する賞与は経費となりませんのでご注意下さい。
第二回目は、以上となります。
節税対策でお悩みの場合は、税理士事務所 TMコンサルティングにご相談下さい。