銀行融資を通すための「資金繰り表」の作り方

「黒字倒産」という言葉をご存知でしょうか?その名の通り、決算書の上では黒字なのにも関わらず、「資金繰り」の問題で倒産してしまうことです。この黒字倒産は、資金繰り表を作っておくことで防ぐ(対策を打つ)ことができます。

黒字倒産防止の他にも、将来の資金が予測できることにより、

・安定した経営ができる
・将来の資金不足に対して未然に対策を講じることができる
・銀行融資を受けやすくなる

などのメリットがあります。

このようなメリットの多い資金繰り表ですが、意外にもちゃんと作成していないという会社は多いものです。少し知識があれば、エクセルなどの表計算ソフトを使うことで簡単に作成することができます。このコラムでしっかりと資金繰り表の必要性と作り方を覚えましょう。

資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違い

同じように「現金の入と出」を扱う資料に『キャッシュフロー計算書』というものがあります。確かに似ていると考えられなくもないですが、実は全く違うのです。キャッシュフロー計算書は、過去の一定期間のキャッシュの入りと出を計算して表示するもので、財務諸表の1つです。

2000年から、上場企業などでは作成が義務付けられています。一方、資金繰り表には作成の義務はありません。基本的に社外に対して公表するものではありませんので、明確に定められたルールも特にありません。また、キャッシュフロー計算書が「過去」の資金の出入りを確認するためのものであるのに対し、資金繰り表は一般的に「未来」の資金の出入りを予測・確認するために用いられます。

資金繰り表の目的

では、義務付けられているわけでもない資金繰り表、一体なんのために必要なのでしょうか?
大きく分けて以下の3つがその理由です。

・1 資金ショートを未然に防ぐ
・2 安定した経営ができる
・3 銀行融資を受けやすくなる

1 資金ショートを未然に防ぐ

先程の「黒字倒産」は、資金繰り表を作り将来のキャッシュの出入りを予測しておけば、未然に対策を打てたはずです。この将来の資金の予測は、最低でも三ヶ月程度はバッファを持っておきたいところ。目安として資金繰り表は「三ヶ月分」は作成しておきましょう。

2 安定した経営ができる

キャッシュの出入りが予測できていなければ、いつ資金ショートに陥るとも限りません。そうなると、とても怖くて大きな投資もできなくなってしまいます。投資ができなければ、いつまでたっても会社は安定して成長していくことができません。つまり、資金の予測をしておくことで、安定した経営ができるのです。

3 銀行融資を受けやすくなる

銀行が融資を判断する場合に、とても大きな武器になるのがこの資金繰り表です。もちろん、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表の数字は非常に重要ですが、銀行が融資を判断する際には「資金使途」と「返済財源」が最重要項目だと言えます。要するに、きちんとした資金使途と返済財源が書かれた資金繰り表は、銀行の融資判断に大きくプラスとして働いてくれるのです。

資金繰り表のココが見られる

資金繰り表は、単に数字を並べただけでは説得力に欠けます。
以下の4つのポイントを自分でチェックしてみましょう。

  • 1 数字に対する「根拠」が整っている
  • 2 予定と実績の「乖離」に関する説明ができている
  • 3 「現実的」な数字になっている
  • 4 突然の「イレギュラー」な資金の出入りをカバーできている

1 数字に対する「根拠」が整っている

数字を単に当てはめるだけでは、資金繰り表を作る意味がありません。資金繰り表の目的を考えると、「できるだけ正確に」予測していくことが必要です。例えば税金や借入金の返済など、普段から損益計算書上では意識していない項目についても根拠と数字を明確にしていきましょう。

2 予定と実績の「乖離」に関する説明ができている

資金繰り表は、最低でも月に一度は更新していく必要があります。どれだけ正確に作っても、毎月の予定と実績の間には差が生じるはずです。その「差」がなぜ生じたのか、把握していくことで、より正確な予測が可能になります。

想定していた資金が回収できなかった場合だけでなく、逆に想定外の資金が確保できた際にもその原因を確認していくようにしましょう。

3 「現実的」な数字になっている

特に銀行への融資の説明で使う場合は、第三者から見ても現実的な数字になっているかを確認しましょう。銀行は「本当にこの会社から融資を回収できるのか?」を見ています。いくら融資を取り付けたくても、非現実的な数字では信憑性に欠けると判断されかねませんので注意が必要です。

4 突然の「イレギュラー」な資金の出入りをカバーできている

毎月同じ金額で動く数字については、ある程度の予測が立てられます。しかし、どうしてもイレギュラーな資金の出入りはあるものです。いくら正確に予測を立てていても、将来は不確かなものです。イレギュラーがあった場合の対応も視野に入れておくことで、より安定した経営につながります。

まとめ

資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違い

・1 キャッシュフロー計算書は過去の説明、資金繰り表は未来の予測
・2 キャッシュフロー計算書は義務、資金繰り表は任意

資金繰り表の目的

・1 資金ショートを未然に防ぐ
・2 安定した経営ができる
・3 銀行融資を受けやすくなる

資金繰り表のココが見られる

・1 数字に対する「根拠」が整っている
・2 予定と実績の「乖離」に関する説明ができている
・3 「現実的」な数字になっている
・4 突然の「イレギュラー」な資金の出入りをカバーできている

資金繰り表は決して作成が難しいものではない。