中小企業における法人税の特例と適用期間の延長について

現在、普通法人の法人税の税率は23.2%に定められています。
一方、規模の小さい中小企業は特例として『軽減税率』が適用され、800万円以下の所得に関しては、法人税率が15%に設定されています。
この特例を『中小企業者等の法人税率の特例』といいます。
2021年度の税制改正では、中小企業者等の法人税率の特例の期間が2年間延長されることになりました。
今回は、特例を受けることができる中小企業の適用範囲と併せて解説します。

軽減税率の特例を利用するための条件

中小企業者等の法人税率の特例は、租税特別措置法によって定められた中小企業が対象です。
法人税は、年間の所得に対して課せられます。
この特例により、中小企業は800万円以下の所得に関して、15%の軽減税率が適用されることになります。

この措置には期限があり、2021年度の税制改正で延長が決定しました。
改正前の『2021年3月31日までに開始する事業年度』から、2年延長され、『2023年3月31日までに開始する事業年度』までとなります。

特例の対象はあくまで中小企業のみで、普通法人はこれまでと同じ、23.2%の法人税率です。
この特例を受けるためには、原則として『資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人』であることが条件になります。
つまり、上記の条件を満たす企業が中小企業だと言い換えることもできます。

ただし、各事業年度終了の時において、大規模法人(大法人)が一定の株式を保有しているなど大企業の支配下にある企業は、中小企業であっても、特例を受けることはできません。
ちなみに、大法人とは、資本金または出資金の額が5億円以上の法人のことを指します。

特例の要件から省かれる適用除外事業者とは

 
また、過去3年の平均所得金額が15億円を超える中小企業は、15%の軽減税率ではなく、19%の本則税率が適用されることになります。
この企業のことを『適用除外事業者』と呼びます。

国税庁では、『その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度を基準年度とし、その年度の所得金額の合計額を各基準年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算した金額が15億を超えている場合』を適用除外事業者と定めています。
ただし、設立後3年を経過していないなどの一定の事由がある場合には、一定の調整を加えた金額により判断されます。

この適用除外事業者に該当せず、大法人の支配も受けていなければ、中小企業と判定され、特例を受けることができます。

まとめると、中小企業以外の普通法人は、所得の区分がなく、一律23.2%の法人税率が課せられます。
また、大法人との支配関係がない中小企業は、800万円以下の所得に関して15%の税率となります。
また、過去3年の平均所得金額が15億円を超える適用除外事業者は、800万円以下の所得に関して19%の法人税率で計算することになります。
なお、800万円を超える所得に関しては、どちらも普通法人と同じ23.2%の法人税率になります。

法人税は、事業の運営に関わる大事な税金です。
近年は大企業が税制の優遇策を受ける目的で、減資を行って中小企業になる動きが相次いでいます。
しかし、中小企業化は、税負担が軽くなるというメリットと、コストの削減や資金調達がしづらくなるというデメリットの両面があるので慎重に検討しましょう。

税負担は企業を運営していくうえで、必ず向き合わなければいけない課題でもあります。
中小企業者等の法人税率の特例の期間延長は、自社が納める法人税を考えるきっかけにもなるのではないでしょうか。

※本記事の記載内容は、2022年2月現在の法令・情報等に基づいています。