税務調査は、誰もが対象になる可能性があります。
対象となる会社や調査時期などは明確に決まっておらず、通常は電話などで調査を行う旨の通知がされ、調査する側とされる側の都合をあわせて行われます。
一方で、すべての税務調査がそうした手順を踏むわけではなく、通知がない『無予告調査』、『強制調査』などもあります。
こうした調査方法の違いや、対象の選び方には、どのような違いがあるのでしょうか。
今回は、経営者であれば知っておきたい税務調査の種類を紹介します。
ほとんどの場合は任意調査が行われる
税務調査は、大きく『任意調査』と『強制調査』に分けることができます。
任意調査とは、いわゆる一般的な税務調査で、納税者の同意に基づいて行われる調査のことです。
任意調査は、その名の通り、納税者の“任意”で売上帳簿や資料を開示してもらう調査です。
しかし、税務職員には納税者に質問や検査のできる『質問検査権』が認められており、正当な理由なく質問に答えなかったり、資料の開示を拒んだりすることはできません。
つまり、任意とはいえども、ある程度の強制力があると考えてよいでしょう。
また、調査自体についても、日時の調整などは可能ですが、調査そのものを拒否することはできません。
調査を拒否した場合には、国税通則法によって1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科せられる可能性があるので、注意が必要です。
対して、強制調査は裁判所の令状を得た国税局査察部による調査のことで、不正や脱税の疑いがある納税者を対象としています。
国税局査察部は、いわゆる『マルサ』と呼ばれ、刑事事件として立件することを目的に調査を行います。
強制調査において、マルサは強い強制力を持ち、事務所内を納税者の同意なく調べたり、資料を徴収したりすることができます。
ニュースなどで、押収した資料の詰まったダンボールを次々と企業から運び出すマルサを見たことがある人も多いのではないでしょうか。
ただし、税務調査のなかでも強制調査の対象となるのはごくわずかで、実際の税務調査のほとんどは任意調査として行われます。
任意調査でも“無予告”の調査がある
いわゆる一般的な税務調査、任意調査のなかには、あらかじめ電話などで調査日が通知される『予告調査』と、予告なしで行われる『無予告調査』があります。
突然、税務職員が自宅や店舗を訪れても、留守や定休日だと調査ができないため、ほとんどの調査は、予告調査です。
無予告調査は、国税通則法第74条で『事前通知を要しない場合』として規定されている特別な調査です。
証拠隠滅や改ざん、逃亡を図る可能性などの要件を満たさない場合は、行われることはありません。
つまり、任意調査を受ける納税者のほとんどが、予告調査を行われていることになります。
また、任意調査には、いくつかの種類があります。
任意調査においては、通常『準備調査』と呼ばれる事前段階の調査を税務職員が行います。
これは、独自に収集した資料などを申告書に照らし合わせる調査のことで、税務署内で行われる『机上調査』のほかに、立地や客数、単価などを確認するための『外観調査』や『内観調査』なども行われます。
内観調査は、内偵調査とも呼ばれ、たとえば税務職員が対象の飲食店に客として出向き、客数や客単価などを調査するケースもあるようです。
これらの準備調査で、調査するポイントが絞り込まれ、納税者とスケジュールを合わせたうえで、税務署員が対象者の元へ出向く『実地調査』が行われます。
この実地調査も、税務職員と納税者が対面して帳簿などを基に行う『一般調査』や、任意調査のうち、事前の連絡なしに抜き打ちで行われる『現況調査』(主な対象は飲食店や現金商売をする企業)、対象者の取引先や顧客、銀行や証券会社などに対して行われる『反面調査』などに分けることができます。
また、電話や郵送などで行われる『簡易調査』もあります。
準備調査の結果、一般調査では不十分とされた場合に、『特別調査』などが行われます。
特別調査は、一般調査よりも長期間に渡って調査されることになります。
このように税務調査にはさまざまな種類があり、種類によっては、個別の対応策が必要なケースもあります。
税務調査の分類や流れを把握しておき、もしものときに慌てないよう、帳簿などの資料と共に、心の準備もしておきましょう。
※本記事の記載内容は、2022年4月現在の法令・情報等に基づいています。