皆さん、「税務調査」を経験されたことがありますか?「税務調査」と聞くと、テレビドラマで見るような何だか堅苦しくて物々しいものを想像しますが、実は日々の税務管理を徹底していれば、なんら怖いものではありません。
むしろ、その会社の税務管理に関する問題点を指摘してくれるので、会社の経営者や税理士にとっては非常に勉強になる機会です。
今回は、その税務調査に関する基本に関してお話ししたいと思います。
1. 税務調査とは?
税務調査とは、納税者がきちんと税金を納めているか、税務署の職員が実際に会社や自宅などに赴いて調査することをいいます。
税務調査と聞くと、「法人にのみ行われるもの」というイメージを抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には法人に対してのみ行われるものではありません。
例えば相続税の調査であれば個人の自宅を調査しますし、法人の他にも個人事業主の場合でも調査を受けることがあります。
また、ある納税者の自宅を調査することは臨宅調査と呼ばれます。
2. 税務調査と税理士の関係
税務署が税務調査を行う企業や個人を決定すると、まずその企業や個人と顧問契約を結んでいる税理士に連絡が入ります。(納税者個人に直接連絡が入ることもあります。)
税理士に連絡が入ると聞くと、疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は税務調査の立ち会いも税理士の重要な仕事の一つです。
というのも、税務調査の立ち会いは税務代理業務に該当する業務の一つであり、税理士法により定められている、税理士の資格を持つ人しかできない仕事だからです。
3. 税務調査が行われる前に
税務署から会計事務所(税理士事務所)に税務調査に関する連絡が入ると、税理士は日程調整などをその対象の納税者と行います。
また、税務調査が行われる前に、確認される資料や、納税者が保管している資料(納品書や領収書など)の整理状況などを確認します。
さらに、会計事務所(税理士事務所)が納税者から預かっている総勘定元帳や源泉徴収簿などがあれば、それを納税者に返却します。
4. 税務調査当日
税務調査は、大体数日に分けて行われることが多いようです。
午前中にスタートし、途中一時間程度の昼休憩をはさんで大体午後4時~5時ごろまで行われることが大体です。
また、テレビドラマなどでは、無言の調査官が事務所中の書類を漁るシーンなどがよく出てきますが、実際にはそういうことは少なく、まずは概況の聞き取りから始まります。
初めての税務調査ということであれば、大体の納税者は緊張してしまうものです。
税務署職員も、そのことは十分理解しています。
ですので、最初は緊張をほぐすような会話から始まることが多いです。
出来るだけリラックスして、税務署職員にわかりやすいように、あなたの企業の組織体系や仕組み、相続税などの調査であれば遺産の保管場所などに関して説明してあげましょう。
5. 税務調査当日の税理士の業務
税務調査への立ち会いは税理士の独占業務の一つではありますが、税務調査当日における税理士の特別な業務というものはあまりありません。
強いて言うならば、納税者と税務署職員の会話に耳を澄まし、相互で誤解している点はないか確認したり、また納税者が知らないような専門的な言葉などが使われた場合はそれをわかりやすく「通訳」することが仕事です。
また、普段顧問契約を結んでいても、納税者に関して税理士が知らない情報はたくさんあります。
そのような情報が明かされることもあり、その後の税理士と契約者との関係を一層深めてくれる機会にもなりえます。
6. 税務調査において特に調査されやすいポイント
実は、税務調査において確認されやすいポイントというものがあります。
それは法人税についてです。
故意に脱税を行おうとして、架空の人件費などを計上したり、売り上げの一部を社長個人の口座に振り込んでいれば問題になりますが、大抵の場合はそういうことは起こらないようです。
ただし、悪意を持った場合ではなくても、会計学的な論理に矛盾した場合に修正申告の対象になることもあります。
また、法人税と同時に消費税や源泉所得税なども確認されます。
特に源泉所得税に関しては、あらかじめ源泉徴収簿や報酬料金などに関して、調査前に一度確認しておくといいでしょう。
7. 相続税に関する税務調査
税務調査で問題になりやすい点がもう一つあります。
それは相続税です。
相続税は、亡くなった人から受け継いだ財産に課せられる税金ですが、この財産の定義に関して納税者側と税務署側で認識が一致していない場合があります。
実は、この財産にはその人の支配下にあったものすべてが含まれます。
例えば、銀行口座の名義人が息子や娘になっていても、実際にその口座を利用しているのが亡くなった本人であれば、それは本人の財産と見なされます。
この他にも、その通帳や印鑑、メモなどの保管場所を訊かれても慌てないために、当日までにどこに何が保管されているのか、漏れはないか、きちんと確認しておきましょう。
8. 税務調査が終わったら
税務調査が終わって、誤りや申告漏れが発見された場合、納税者から異議申し立てがないときは、修正申告することになります。
この際に、税理士が活躍することになります。
というのも、税理士は税務署からの指摘点などを聞き、それをわかりやすく納税者に伝える、いわば「通訳者」としての顔を持つからです。
納税者も、税務署も納得して修正申告が出来るように、準備を進めます。
また、納税者が税務署の指摘に対して不服がある場合にも、税理士が活躍します。
税理士はこのとき、納税者の代理として、その不服や異議申し立てを代理で行うことも出来るからです。
今回のまとめ
いかがだったでしょうか。
税務調査と聞くと、何だか怖くて堅いイメージを思い浮かべますが、日々の会計業務などをしっかりと行い、きちんと納税する意識を持っていれば怖がる必要はありません。
また、多くの税理士にとって税務調査というのは基本業務の一つであり、慣れっこのはずです。
税務調査の連絡を受けても慌てず、顧問契約を結んでいる税理士さんとじっくり、間違いのないように準備を進めましょう。
もし間違いを発見したとしても、修正申告が可能です。
ぜひ落ち着いて当日を迎え、自身の納税者としての姿勢や業務の正しさを確認する機会としましょう。