税務署や顧問税理士から税務調査の連絡が来て、憂鬱な気分になっている経営者や個人事業主の方はいらっしゃいませんか?
もしかしたら、テレビドラマや映画などの影響で、いきなり税務署職員が来て会社や家の中を調べ始める、というような調査を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、実際にはこのような調査が行われるのはまれで、多額の脱税をしていたり、所得隠しをしている場合などに限ります。大抵の場合は任意調査といい、納税者の同意に基づいて行われるものであり、税務署も最初から悪意をもって行っているわけではありません。
今回は、いざ税務調査が入っても慌てないように、普段からできることや税務調査の流れについてご紹介いたします。
目次
1. 税務調査の本質を押さえる
2. 基本は日々の経営から
3. 税務調査に狙われやすい会社
4. いざ税務調査の連絡が来たら
5. 調査当日の流れと対応
6. 税務調査が終わったら
7. 税務調査と税理士
8. まとめ
1. 税務調査の本質を押さえる
まずこのコラムの始めに、税務調査の基本を押さえることにしましょう。
税務調査というのは文字通り、税務がきちんと行われているか調査することです。
税務とは税金の支払いに関する業務のことであり、申告漏れがないか、額に誤りはないかなど、その納税者の税務実態を調べることです。
つまり、日ごろからきちんと帳簿や源泉徴収簿などをつけ、申告を行っていれば、何ら怖がる必要はありません。
2. 基本は日々の経営から
「1. 税務調査の本質を押さえる」でも述べたように、何よりもまず日ごろからきちんと帳簿をつけたり、源泉徴収簿などを管理することが重要です。
特に、個人事業主から法人成りした企業の場合は、その売り上げの振り込み先を法人口座ではなく個人口座のままにしていたり、もしくは例外的に個人口座に振り込まれ、そのまま法人口座に振り替え忘れていて問題になることもあるようです。
また、これは個人事業主に限ったことではありませんが、決算期区切り前後での取引の記録が漏れているなどで、問題になることが多そうです。
基本的なことですが、ついつい気が緩んでしまいそうなところですね。
普段から気を引き締めて管理すること、また税の専門家である税理士と顧問契約を結んでおき、普段から税務状況を確認してもらうといざという時にも慌てずに対応できそうです。
3. 税務調査に狙われやすい会社
基本的な日々の業務が重要というお話をしましたが、日々の業務をきちんとこなしていても税務調査に狙われやすい会社というものがあります。
そのような会社には以下の特徴があります。
①売り上げが伸びた会社やマスメディアなどに露出し、注目を浴びている会社
売り上げが伸びれば伸びるほど、節税対策をしたくなるものです。
また、本業が忙しくなればなるほど、会計業務を怠りがちです。
税務署はその隙を狙ってきます。
忙しい時ほど、税の専門家である税理士にも確認をお願いするなど、対策を練っておきたいところですね。
②いきなり赤字になった会社
いきなり赤字になると、税務署から睨まれやすいです。
また、意外に思われるかもしれませんが、赤字でも支払うべき税金があるということを忘れないでください。
さらに、故意に赤字になるように不正調整したとしても、納税の義務はあるという意識を持ちましょう。
③前回の調査時から3~5年経過した企業
一定期間、税務調査が行われていなかった場合は税務調査が入る可能性が高まります。
この場合は、会社に何か不正の可能性があるため調査が入るのではなく、いわば定期点検のように、時期が来たために入るということになります。
以前の調査から3年以上経過している会社や、個人事業主の方は注意が必要です。
④税務署に情報提供があった場合、不正の事実を疑われている場合
会社内で不正を行っている場合、その会社を辞めた元社員や周辺の関係者などから情報提供があり、調査に入ることがあります。
また、他の会社に税務調査に入った際に、取引のある会社の不正が連鎖して発覚するということもあるようです。
不正を行っている場合は、いずれは発覚するという意識を持って、公平公正な納税を心掛けるようにしましょう。
この他、飲食店など顧客から直接金銭の受け取りなどが行われている会社の場合は、日程調整などを行わず、予告なく突然調査に入ることがあります。
4. いざ税務調査の連絡が来たら
もし税務調査の連絡が入ったとしても、拒否はしないようにしましょう。
というのも、特別国税調査官(トクチョウと呼ばれています。)などが行う強制調査ではない限り任意調査ではありますが、特別な事情がない限り拒否できないことになっています。
法律には罰則規定も定められています。
役員の出張や会社の重要な業務などでどうしても対応できない場合は仕方がありませんが、拒否せずに調査を受け入れることが基本です。
連絡が来た場合は、税務調査を第一に社内のスケジュールを練りましょう。
5. 調査当日の流れと対応
本題からは少しずれてしまいますが、調査当日には顧問契約を結んでいる税理士も立ち会うことができます。
実は、この税務調査への立ち会いは税理士に特権が与えられている業務内容の一つでもあり、税理士も慣れている人が多いです。
また、税理士は税務署職員が使う専門用語や、調査の流れ、確認するポイントも把握しているので、事前に税理士と一緒に関係書類や帳簿を確認しておくといいでしょう。
誤りや抜けているところがある場合は、税理士の指示に従い修正申告の手続きをしてください。
6. 税務調査が終わったら
税務調査時に不正の指摘を受けた場合は、修正申告というものを行います。
また、不正調整を行い、故意に過少申告した場合は、重加算税と呼ばれるいわば罰金のようなものを支払います。
税務調査後の修正申告に関しても、顧問契約を結ぶ税理士がいる場合は、税務署と顧問税理士が今後の対応を協議した上で会社に指示が来ることが多いようです。
また、税務署が指摘した点に関して不正がある場合は、税理士を通じて税務署に異議申し立てを行うことができます。
7. 税務調査と税理士
「5. 調査当日の流れと対応」でも少しお話しましたが、税務調査には税理士も立ち会うことができます。
また、税務調査前に帳簿などを確認してもらう場合や、税務調査後に修正申告する場合、調査内容に不服があり異議申し立てを行う場合も税理士を介して行うことになります。
普段、個人事業主や小規模な会社で税理士と顧問契約を結んでいない方も多いかもしれませんが、このような時にも税理士は会社をサポートしてくれる力強い存在です。
もし、税務調査の連絡を受け慌てている方がいらっしゃるならば、まずはお近くの税理士さんに相談されてはいかがでしょうか。
税務調査をまだ受けていない会社でも、普段から税務や会計を確認してくれる税理士さんを見つけてみてもいいでしょう。
きっと、いざという時に助けてくれるはずです。
8. まとめ
いかがでしたでしょうか。
税務調査官が何を目的に税務調査に入るのか、どのような会社を狙うのか、さらには事前にどのような準備をしておけばいいのかを押さえるだけでも、精神的に楽になるのではないでしょうか。
重要なのは、緊張のあまりちぐはぐな対応をしてしまったり、質問をわざとそらしたり、不正が見つかったとしてもそれをごまかそうとしないことです。
何があっても誠実に、納税の義務を果たそうとする態度を示しましょう。