資金ショート寸前!社長にできるこれだけのこと【緊急対応】

このコラムは、資金不足について悩み、資金ショートの回避策を求めている経営者さんに向けて書きます

資金ショートが迫っている方は、藁をもつかむ思いで資金不足を解決できる方法を求めていると思います。

しかし、焦らないで下さい。

資金ショートの恐れが出てきたとしても、社長にはまだまだやれることはあるのです。このコラムでは資金ショートの回避策について解説していきます。

目次

  • 資金ショートとは?
    • 1 資金ショートの定義
    • 2 資金ショートの原因
    • 3 キャッシュフローの計算方法
    • 4 資金ショートしたら会社はどうなるの?
  • 緊急対応
    • 1 まずは冷静になること
    • 2 本当の状況を確認すること
    • 3 平時から有事へマネジメントスタイルを切り替える
    • 4 緊急事態だということを主要な社員へ伝える
    • 5 苦しくても最優先で支払いすべきこと
  • 『日繰り表』を作る
    • 1 『日繰り表』とは?
    • 2 『日繰り表』の作り方
    • 3 『日繰り表』の作り方 その二
    • 4 『日繰り表』の見方
    • 5 『日繰り表』を作成したら
  • 資金ショートを回避するためにやるべきこと
    • 1 入金を前倒しする
    • 2 出金を先延ばしする
    • 3 支出を減らす
    • 4 入金を増やす
  • 資金ショートを防ぐための心構え
    • 1 普段から信頼関係を構築していく
    • 2 必ず予兆がある、見逃さない
  • 今回のまとめ

資金ショートとは?

1 資金ショートの定義

まず、改めて資金ショートの意味を確認しておきましょう。

  • 資金ショートとは、手元の現預金が少なくなり、仕入れや人件費の支払いなどの運転資金が払えなくなってしまうこと。

つまり、売上が下がることでも単に赤字だということでもありません。あくまで「支払いができない」という状況、それを資金ショートと呼んでいるわけです。

2 資金ショートの原因

それでは、資金ショートの主な原因を見ていきましょう。

  • 業績不振による売上の低下
  • 売掛金の回収と買掛金の支払いの、タイムラグの悪化
  • 売掛金の回収不能

など。

もちろんここで上げた以外にもたくさんのケースが考えられますが、これらを一言でまとめるなら「資金繰りの失敗」と言えるでしょう。
また、普段からキャッシュフローベースの経営をしていないことも、資金ショートの原因になりえます。

3 キャッシュフローの計算方法

損益計算書をベースにした売上と利益の計画も、経営にとってはとても重要です。しかし、キャッシュフロー計算書をベースとしたお金の入りと出の計画も、資金ショートを回避し、黒字倒産に陥らないためには絶対に必要です。ここで運転資金の計算方法を解説します。

  • 運転資金 = 売上債権 + 在庫 – 仕入債務

一般的な企業では、通常は原料や商品を仕入れ、それを在庫として持ち、売上として捌いていくという経常的な営業活動を行っています。普通は仕入れた金額よりも高い金額で売るため、その差額が利益となるわけですが、問題は「タイミング」です。仮に以下のようなケースを考えてみましょう。

  • 当月に仕入れて、その金額(100万円)を支払います。
  • 当月に売上げて、その金額(150万円)は翌々月末での入金とします。
  • 翌月も同じように仕入れて、その金額(100万円)も支払います。
  • 翌月も同じように売り上げて…

と、このようなサイクルで営業活動を行うとします。すると、毎月50万円の利益が出ているにも関わらず、キャッシュフローはしばらくの間減っていくこととなります。

仮に「当月」を1月とすると、一時的には3月までに300万円の資金が出ていくことになるわけです。当然のことのように思えますが、これがとても大事なことなのです。

売上と売掛債権の回収が同じタイミングで継続していけば何も問題もないのですが、もし1ヶ月でも回収が遅れると大変です。100万円分の余裕がなければ、途端に資金ショートの恐れが生じます。以上のように、企業は構造的に資金ショートの可能性をはらんでいるのです。

4 資金ショートしたら会社はどうなるの?

会社は、たとえ大赤字でもそれだけでは倒産しません。(もちろん早急な改善は必要ですが)ただし、たとえ黒字であっても、一度資金ショート起こしてしまうと、黒字倒産という事態になりかねません。特に手形の不渡りが半年間で2回発生してしまうと、銀行の取引が停止されるため実質的に「倒産」を意味します。

また、人件費を支払えないと社員達は会社から離れてしまいますし、借入金を払えないと銀行からの信用に大きな傷がつくでしょう。仕入れ費用や外注費を払えないと取引先からの信用を失くすことになりますし、家賃を払えないと営業活動ができなくなります。

会社は営業活動を続ける限り、必ず毎月多くの支払いをしていくこととなります。それらの支払いをしなければ、相手からの信用をなくし、そして取引ができなくなったり、営業活動ができなくなったり、早い話が倒産という結果になってしまうのです。資金ショートは「絶対に避けるべき」だということがお分かりいただけたかと思います。

緊急対応

手元のキャッシュが底をつき、手形や借入金、家賃や人件費などが支払えない…。経営者にとっては悪夢のような、非常に厳しい状況ですよね。もちろんこうなる前に対処できていれば良かったのですが、今さら誰かのせいにしたり、過去のことを後悔しても後の祭りです。まずは現実逃避せずに、しっかりと現状に向き合うことから始めましょう。

1 まずは冷静になること

現預金が底をついてくると、多かれ少なかれ、普通の人はパニック状態に陥ります。会社の経営を続けていくこと自体が危ぶまれるわけですから、無理もないことです。しかし資金ショート寸前の状況まで来ても、経営者にはまだまだやれることが残っています。そして冷静にやるべきことをやっていけば、十分乗り切ることも可能なのです。

大企業の経営者でも、資金ショート寸前だった(中には実際に資金ショートを起こした方もいますが)経験をお持ちの方も少なくありません。しかし、資金ショート寸前の経験をしてもなお、いや、そのような経験をしたからこそ、さらに大きな器の経営者へとレベルアップされたのではないでしょうか。

確かに、常に余裕のある手元資金を持っておくことが理想ではありますが、会社の経営は荒波の航海にも例えられる通り、いつ予想外のことが起きないとも限りません。以前誰かが「想定の範囲内」という言葉で世間を賑わせましたが、いつも全てが想定通りに行くことの方が少ないくらいでしょう。

しかし、そこでパニック状態になっては、混乱して正しい判断ができなくなります。資金ショートが迫ってきたら、まずは冷静になるように努めましょう。ここがまさに経営者の腕の見せどころだ!くらいドッシリ構えて良いのです。

腹を決めたら、あとはやるべきことを片っ端からやるだけです。このコラムで取り上げる手法を参考に、資金ショートをうまく回避してください。

2 本当の状況を確認すること

さて、冷静になったら通帳と向き合いましょう。
そして以下の3つのポイントを把握します。

  • 今いくら残っているのか
  • いつ、いくらの支払いがあるのか
  • いつ、いくらの入金があるのか

これで、いつ資金がショートするのかの見当がつきます
対策を立てるためにも、この3点を正確に把握しておくことが重要なのです

3 平時から有事へマネジメントスタイルを切り替える

日繰り表を作ってみて、いよいよ資金ショートのXデーが近づいていることが分かったなら、続いて行うことはマネジメントスタイルの切り替えです。

危機管理の基本として、「平時のマネジメント」と「有事のマネジメント」の2本の柱を持つことが大事です。普段は平時なので、これまで通りの経営者の意思決定のやり方で構いません。

しかし、資金ショートが迫っている状況は、どう考えても有事です。有事のマネジメントは当然、平時とは違ったものになります。例えば以下の通りです。

  • 意思決定のスピードを早めるために、社長が直接現場を指揮する
  • 正しい情報にいち早く接するために、ホウレンソウを徹底する
  • 優先順位の低い作業はやらない、または先延ばしにし、優先順位の高い作業に徹する

つまるところ、社長に強いリーダーシップが求められるわけです。実は、日本人は元々このような緊急事態の対応に優れていて、変化を求められる。差し迫った状況が発生すると、平時のルールを超えて、大きな仕事を成し遂げる力を持っています。

幕末の混乱期でもそうですし、戦後の復興期でもそうです。社長の下に一致団結してこの事態を乗り越えていく、そのようなリーダーシップを発揮する場面です。

4 緊急事態だということを主要な社員へ伝える

いくら資金がショート寸前だとしても、社長だけが危機感を持っているだけではことは進みません。社長自身が有事のマネジメントへ切り替えると宣言しないと、社員達に伝わりません。

そのためには、主要な社員たちに緊急事態だということを伝えることが大事です。もちろん、社員の中には動揺する者が出ないとも限りません。特に若い社員や入社間もない社員には伝えない方が無難でしょう。基本的にはリーダー層だけに伝えれば大丈夫です。

伝える時には、一人ずつ面談することが望ましい形です。そして十分時間をとって説明しましょう。多数の社員に同時に伝えることは効率の面から見れば正しいですが、情報不足により不要な憶測を招かないとも限りません。

面談の時、社長が自信を失っていては社員達のやる気を引き出すことはできません。厳しい現状を正確に伝えつつ、この危機を乗り越えるための道筋まで示しましょう。

5 苦しくても最優先で支払いすべきこと

資金ショートが直前に迫っているわけですから、当然支払いに充てられる現預金はほとんどないはずです。しかし、それでも倒産を防ぐためには「手形・小切手」だけは支払うべきです。なぜなら、半年間で不渡りを2回起こしてしまうと、銀行の取引が停止され、事実上「倒産」となってしまうためです。

社長個人の貯金を切り崩してでも、友人知人に金策してでも、手形や小切手の支払いだけは漏らさないよう、注意しておきましょう。

手形と小切手以外の支払いは、交渉次第で何とかなる場合もあります。後ほど、その「なんとかする」具体的な方法も解説しています。

『日繰り表』を作る

月次の資金繰り表を作っている会社でも、日別の資金繰り表(日繰り表)まで作っている会社は少ないようです。日繰り表を作成することにはそれなりの時間がかかります。資金繰りに余裕がある時は、わざわざ業務の時間を削って日繰り表を作らなくても良いでしょう。

しかし資金ショートが迫っていると感じたら、必ず作ってください。どんな対応策も、全ては「正確な現状認識」から産まれるのです。資金繰りを完璧に把握して、資金ショートを回避する解決策を見出すためには、『日繰り表』の作成は欠かせません。

1 『日繰り表』とは?

日繰り表というものをご存じない方も多いと思いますので、ここで少し説明します。

  • 日繰り表とは、月次の資金繰り表を1日ごとに細分化したもの

要するに、会社で「家計簿」をつけていくことだと考えてください。もちろん家庭とは違い会社であれば、その金額も大きいです。しかし決して難しいものではないんです。

2 『日繰り表』の作り方

日繰り表の作成に難しい作業はありません。Excelで誰でも作成することができます。

  • 1列目に「日付」を記入します
  • 2列目に「内容」を記入します
  • 3列目に「入金」の金額を記入します
  • 4列目に「出金」の金額を記入します
  • 5列目に「残高」の金額を記入します
日付 内容 入金 出金 残高
4月1日 A株式会社様 100,000 1,000,000
家賃支払い 200,000 800,000
4月15日 B株式会社様 150,000 950,000
4月15日 給料支払 500,000 450,000
4月30日 4月合計 250,000 700,000 450,000

いかがでしょうか。まったく難しくないですよね?

3 『日繰り表』の作り方 その二

日繰り表を作ったら、次に資金ショートの対策を打っていくために、予測を記入していきましょう。これも難しく考える必要はありません。まず、毎月決まった日に決まった金額で支払うものを記入していきます。例えば、家賃や給料や水道光熱費などです。

次に、入金や出金の予測をどんどん記入していきます。予測値なので、ここでは日付や金額が多少間違っていても大丈夫です。しかし、できるだけ抜けもれなく、できるだけ正確に記入していきましょう。

よく言われる日繰り表の問題点として「短期的な視点で経営するようになり、長期的な計画が動かなくなる」と言われますが、資金ショートを起こしてしまったら短期も長期もありません。毎日更新していきましょう。どうしても忙しい方の場合は週に1度でも構いませんが、資金ショートが迫っているのであれば、毎日の出納を把握することは必須でしょう。

4 『日繰り表』の見方

日繰り表ができたら、以下のポイントを確認してください。

  • 資金がショートする日(Xデー)はいつ頃か?
  • 前倒しでもらえそうな入金はないか?
  • 先延ばしさせてもらえそうな出金はないか?

日繰り表を確認してみると、何もしなくても資金ショートは起きなそうだった、ということもありえます。そのような場合でも、もちろん資金が少ないことは事実でしょうから、今月はたとえ大丈夫でも来月以降にまた資金がショートの恐れがあるかもしれません、根本的な問題は解決していないのですから。

資金的に余裕を持つことができ、そして毎月のキャッシュフローがプラスに転換するまでは、日繰り表は継続していくことをオススメします。

5 『日繰り表』を作成したら

日繰り表を作成して予測の数字も入れたら、いつ資金ショートのXデーが来るのかを把握できたはずです。そしてその状況を主要な社員と共有することもできたでしょう。

ここまでくれば、これまで漠然とした不安を持っていた経営者も、なぜか冷静になっていることに気づいたのではないでしょうか?実は多くの場合、不安を持っていても不安を直視することで落ち着くことができると言います。

さて、落ち着いたところでまだ問題は解決していません。いよいよ具体的な行動で問題解決に取り組もうではありませんか。

資金ショートを回避するためにやるべきこと

1 入金を前倒しする

一時的とは言え、入金があれば資金ショートは回避できます。しかし「その入金のタイミングが出金のタイミングよりも先だから困ってるんだよ」と思われる方も多いでしょう。

確かにその通りですが、では「入金のタイミングを前倒しにできないか試しましたか?」と聞くと、多くの人からは「考えても見なかった」という答えが返ってきます。入金のタイミングって、何か決まったもので、動かすことのできないものだと思いこんでいませんか?でもそんなことはないんです。

例えば逆の立場で考えてみましょう。自社が出金をするタイミングは、請求書に書いてある日付に遅れないようにしよう、そのくらいしか考えていないと思います。確かに長期的に見ると、出金のタイミングはできるだけ先延ばししたほうが、資金繰りには有利です。

だがここで想像してみてください。もし取引先から「申し訳ないが入金を少し早めてもらえないか」などと相談があったら、100%断るでしょうか?多くの場合は、その相談を無碍にすることはなく、一度考えてみるのではないでしょうか。そうです、入金してくれる側も、結局は人間なのです。恥を忍んでそのような相談をしたからには、何か抜き差しならない状況だと察してくれる人もいるはずです。

とにかく、腹を決めて入金を前倒しにできないか、取引先に相談してみましょう。これが、経営者ができる資金ショート回避法の1つ目です。後払いで請求していた会社であれば、前入金に切り替える。また、手付金や中間金をもらうという方法も考えられるでしょう。

もし売掛金の回収が滞っていた取引先があれば、回収を徹底することも重要でしょうし、取りっぱぐれをなくすために、新規の取引を行う前に与信審査を行うことも時には必要となるかもしれません。在庫の管理を見直し、在庫を圧縮することも一つの方法でしょう。手形での入金を現金にしてもらうことも良い方法です。

2 出金を先延ばしする

次は逆に、出金を先延ばしにする策です。本来は出金を先延ばしにすることは信用の失墜につながりかねないので経営的にタブーですが、事ここに至ってはそんなこと言ってられません。やはり恥を忍んで、出金の先延ばしを相談してみましょう。

相談先はいくつかの候補があります。例えば以下の通りです。

  • 銀行に返済を「リスケ」してもらう
  • 従業員に「給料」の支払いを待ってもらう
  • 取引先に「買掛金」の支払いを先延ばししてもらう

もちろん、これらには相応のリスクが伴います。

  • 例えば「リスケ」

どれだけ銀行と長い間良い関係を保っていても、一度リスケをしてしまうと追加の融資はかなり難しくなります。

  • 例えば「給料の遅配」

突き詰めれば、社員達は給料をもらうために働いてくれているわけです。もし遅配となればモチベーションを下げてしまうことは免れません。

  • 例えば「買掛金の先送り」

取引先にとっては、想定していた売上が入らないことになります。当然取引関係にもマイナスの影響が出るかもしれません。失った信頼を回復するのは確かに難しいですが、それでも不可能なことではありません。しかし、倒産させてしまっては元も子もないでしょう。ここでリスクテイクすることは致し方ないことなのです。

その他の手法

  • これまで現金で支払っていたものを、手形で支払うようにすること
  • 税金や社会保険料の支払いを先延ばしすること

3 支出を減らす

最後に支出を減らす方法も見ていきましょう。業種にかぎらず支出の大きな項目は以下の通りです。

  • 仕入れ
  • 人件費
  • 通信費・水道光熱費
  • 家賃
  • 交通費
  • 外注費
  • 税金等

これらの支出を減らす方法を解説しましょう。仕入れは売上予測をより正確に立てることで、在庫管理を徹底することで減らせる可能性があります。人件費のカットは慎重に行いましょう。

何事も身を切ることが、リーダーの役目。まずは「役員報酬をカット」することから始めるのが基本です。

通信費は、例えばサーバー代や電話代などです。普段意識することもないですが、多くの会社で様々なプランが出されています。乗り換えが面倒な場合もありますが、乗り換えが無料というケースも多いようです。いずれにせよ、何気なく支払いを続けるのではなく、細かく見ていくことが大事です。

4 入金を増やす

先に述べた「前倒し」ではありません。入金を新たに「増やす」ことです。具体的には「新規の売上獲得」ということになります。業種によって新規開拓から入金までのスパンはまちまちです。しかし、例え新規開拓に時間のかかる業界であっても、短期的に売上獲得につなげる方法はあります。

  • 「過去客」の再アプローチ
  • 「見込客」への重点的な営業
  • 「既存客」への追加商品の提案

などです。
会社にとっての財産は、何もバランスシート上の資産だけではありません。お客さまとのつながりも、大きな財産だと考えられます。これまでの営業により、少なからず色々な方とつながりを持ってきたはずです。

現在取引が続いている「既存客」はもとより、たとえ今は取引がなくなった「過去客」や、まだ取引に至っていない「見込み客」も売上につながる可能性は大いにあります。

  • 「過去客」への再アプローチ法

過去客と一口に言っても、取引が終了した理由はそれぞれです。例えば「年間の予算を使い切ったので一時的に取引が停止」している案件であれば、タイミングさえ合えばすぐに取引を再開してくれる可能性もあります。

その他にも「担当者の交代によるドタバタで契約が停止」してしまった案件などの場合も、連絡をして再び関係づくりができれば再開してもらえるかもしれません。このように、過去客と言うともう終わった案件で、入金には関係ないような気がしますが、1社1社の状況によってはすぐに入金につながるケースも少なくないのです。

  • 「見込客」への営業法

見込客の定義は難しいのですが、BtoB業種であれば「既に1度以上やりとりがあり、具体的な提案まで進んだが契約には至っていない案件」と捉えて良いでしょう。このような見込客へは、丁寧なクロージングを行うことで契約・入金につなげましょう。

もし一度断られたり、ペンディングになってしまったとしても、諦める必要はありません。可能ならばどの点が契約の障害になっているのかを聞き出した上で、間を開けずに再提案してみることも有効でしょう

  • 「既存客」への追加販売法

既存客への追加販売は、新規客の開拓販売に比べそのコストが1/7以下だという検証結果もあります。そのくらい、既存客への販売は楽だということ。営業と聞くと反射的に「新規開拓」をイメージしてしまう方も多いでしょうが、意外にも既存客への提案の方が素早く売上・入金を獲得できるのです。

仮に追加で売れる商品がないという場合は、既存客へヒアリングをしに行きましょう。虚心坦懐、お客さまのニーズを伺うことで、効果的な商品・サービスへつながることも多々あります。

ちなみに、夜に出回る画期的な商品・サービスというものは、このような危機的状況下で産まれたケースも多のです。「ピンチはチャンス」というと聞こえはいいですが、転んでもただでは起きないという姿勢は企業を強くしなやかに成長させてくれるでしょう。

  • 刈り取りの時期だと捉える

経営者は常に、新しい人脈を作り、新しい商品に目を凝らし、自社のサービスの強化に血道を上げてきたはずです。それらは「種まき」と呼ばれる行為です。しかしここで取り上げた営業手法を簡単に言い換えると、「刈り取り」と呼ぶべきものでしょう。

平時に種を撒き、水をやり、草を抜き、手間ひまかけて育ててきた稲穂を刈り取る権利が、あなたにはあるのです。こういった厳しい時期を逆に掻き入れ時と捉えて、入金へとつなげましょう。

  • 値下げ

入金を増やす方法として「値下げ」という方法もあります。これも平時と有事によって善悪が代わるものですが、当然有事には善となります。なぜ平時には悪かというと、それは値下げによって収益率の低下を招き、ひいては会社の生産性を下げてしまう元凶になることが多いため、値下げは麻薬だとも言われます。

もちろん、標準化などで効率が上がり、値下げをしても適正な利益が確保できるならば問題ありません。しかし何の理由もなく値下げを何度も続けていると、顧客は値下げに慣れ、値下げの時以外には正常価格で購入してくれなくなります。そうなると価格競争の一人デフレ状態です。

例え他社が値下げをしても、むしろ他社との差別化をはかり、顧客に良さを知ってもらう努力を続けるべきでしょう。がしかし、資金ショートが迫っていてはそんな悠長なことは言ってられません。価格の問題で購入を渋っている顧客には、一つの有効な武器として値下げを行ってみましょう。ただし、あくまで緊急特別措置法だということをお忘れなく。

  • 遊休資産の売却

遊休資産とは、現在会社で利用していない資産のことです。
例えば
・自社ビル
・株などの有価証券
・社宅
・その他土地や建物
などです。

これらの内、すぐに現金化できるものは売却してしまいましょう。もちろん営業に利用していて、売ったら営業活動に影響の出るものは控えます。これらを現金化することで、支払いに充てる原資を獲得することができるでしょう。

さらに二次的な効果として、不動産などを売却することで固定資産税の節税ができたり、場合によっては自己資本比率が改善して銀行などからの信用が向上することも考えられます。

  • 社長が補填する

あまりオススメはしませんが、社長が個人の現預金を会社に入れるという方法もあります。これは「社長借入」と呼ばれるもので、本来はあまりオススメできません。というのも、社長借入金は自己資本比率を下げてしまうことにつながるので、銀行などはこの社長借入金があると自社の評価を下げてしまうからです。

とは言えこの状況ではしかたありません。足りなかったら入れましょう。そして、もし資金的な余裕が出てきたら、余剰金から返済するか、資本金へ振り返るなどで社長借入金は早めになくすようにしましょう。

  • 銀行融資

銀行からの融資を受けることで、資金ショートを乗り切るという方法もあります。もし、数ヶ月以内に大きな契約(入金)が確定しているのなら、それまでの「つなぎ融資」として借入を打診してみると良いでしょう。もし、担保に出せる資産があるのなら、融資も多少有利になります。

もし、業績がそれほど悪いわけではなく、慢性的な資金不足に陥っているのなら、長期的な運転資金として、ある程度まとまった金額を借り入れることが解決策になるでしょう。もちろんしっかりとした計画と経営に対する熱意が必要ですが、可能性は十分にあります。当サイトのコラムをしっかり読み込んで、素早く融資の申込みを行いましょう。

  • その他の手法

・生命保険を解約する
・定期預金を取り崩す

ここでは説明いたしませんが「クレジットカードの現金化」や「ファクタリング」、「ノンバンクローン」といった方法もあります。これらについては大きなリスクが伴う場合があるので、よく注意して利用するようにしましょう。

資金ショートを防ぐための心構え

1 普段から信頼関係を構築していく

このような緊急事態には、普段からの信頼関係がものを言います。ここで取り上げた方法のいずれをとるにせよ、取引先や銀行、社員や家族などの助けがないと、資金ショートを乗り切ることはかなり難しいでしょう

どれだけ多くの関係者と信頼を築けているか、そういった定性的ですぐに数字に表れないようなことが、自社を危機から救ってくれる契機となるのです。決して打算的ではいけませんが、信頼を獲得するための普段からの態度こそが資金ショートという非常事態を切り抜けられるかどうかの試金石になるのです。

2 必ず予兆がある、見逃さない

資金ショートは、ある日突然やってくるように思うかもしれませんが、往々にして予兆があるものです。注意深くキャッシュフローを確認して、取引先や営業の状況をリアルタイムで把握していくようにしましょう。万全に見えていても、何かしらの異変は必ず見つかります。

その時に前もって対処していけば、大事にならずに済みます。予兆を見逃さないという決意、これがリスク対策には重要なのです。

今回のまとめ

資金ショートとは、手元の現預金が少なくなり、仕入れや人件費の支払いなどの運転資金が払えなくなってしまうこと。

資金ショートの恐れが生じたら、

  • 有事のマネジメントスタイルへ切り替える
  • 手形や小切手の支払いだけは漏らさない
  • 『日繰り表』を作る
  • 入金を前倒しする
  • 出金を先延ばしする
  • 支出を減らす
  • 入金を増やす

資金ショートを防ぐために、普段から信頼関係を構築していく・必を見逃さない。