仕事のパフォーマンスが向上する「勤務間インターバル制度」に注目!

従業員が仕事上で能力を最大限に発揮するには、しっかりと生活時間や睡眠時間を確保する必要があります。
働き方改革の一環として、『労働時間等設定改善法』が改正され、2019年4月から、『勤務間インターバル制度』の導入が事業者の努力義務となっています。
これは、1日の勤務の終業時刻から翌日の始業時刻の間に、一定時間以上の休息時間を設ける制度で、従業員の生活時間や睡眠時間の確保を推奨するものです。
従業員のワークライフバランスを保つためにも有効な勤務間インターバル制度を紹介します。

勤務間インターバル制度を導入するメリット

通常の勤務形態はもちろん、裁量労働制やフレックスタイム制などで繁忙期には長時間労働になったり、交替制によって勤務間隔の短いシフトになるケースがあります。
そういった場合は、従業員の休息時間を十分に確保できない可能性が高いといえます。
たとえば、毎日4時間の睡眠時間を6日間継続するだけで、一晩徹夜した状態と同等のパフォーマンスの低下が生じる、という研究報告もあります。

睡眠不足が続くと疲労が溜まっていき、判断能力や反応速度が鈍くなり、業務に支障をきたすことになります。
生活時間や睡眠時間の確保は、従業員が高いパフォーマンスを発揮するための前提条件でもあるでしょう。
同時に、人手不足が顕著な業界において、働きやすい環境に整備することは、人材の確保や定着にもつながります。

生産性の向上を考えるのであれば、勤務間インターバル制度の導入を前向きに検討してみましょう。

勤務開始時刻を超える場合はどうするか

勤務間インターバル制度を導入する場合、重要なことは、インターバルの設定です。
勤務終了時刻から次の勤務開始時刻までインターバルです。通勤時間や睡眠時間はもちろん、生活時間や通勤時間も考慮したうえで設定します。

勤務時間は企業によって異なるため、まずは自社の実際の勤務時間を割り出し、インターバルが取れているのか、もし取れていないのであれば、どの程度なのかを把握します。
従業員本人や上長、労働組合などから話を聞いて、正確に実態を捉えたうえで、インターバル時間を設定しましょう。
時間の設定は、企業側に委ねられていますが、国はおおよそ9~11時間未満を基礎とした設定を推奨しています。
また、従業員に対して制度の周知を図るとともに、就業規則への記載も忘れずに行いましょう。

勤務間インターバル制度を運用するにあたっては、所定の勤務開始時刻を超えてしまう場合の取り扱いも決めておく必要もあります。
基本的には、下記の2つの方法が考えられます。

(1)インターバル時間と翌日の所定労働時間が重複する部分を働いたものとみなす
(2)翌日の勤務開始時刻を繰り下げる

たとえば、勤務時間が8時~17時、インターバル時間を11時間に設定している企業で、23時まで従業員に時間外労働をさせた場合、(1)の方法では、インターバル時間と所定労働時間が重複する朝の8時~10時は働いたものとみなし、実際の勤務開始時刻を10時とします。

(2)の方法では、単純に翌日の勤務開始時刻を10時に繰り下げることになるため、その日の勤務終了時刻の取扱いについても決めておく必要があります。
その際は、勤務終了時刻も変更せずに17時で勤務を終了させる方法と、勤務終了時刻も繰り下げて19時を勤務終了時刻とする方法の2つが考えられます。

勤務間インターバル制度を導入するうえで注意したいのは、(1)も(2)の方法も、翌日の勤務開始時刻が遅くなるということです。
勤務時間内に業務が終わらず、結局、翌日も残業が発生してしまっては本末転倒です。
制度を導入し、実際に運用していくなかで、常に効果を検証し、課題等の洗い出しを行っていくことが重要です。

また、納期の逼迫や、突発的なトラブルなど、避けることができない事情で定められたインターバル時間を確保できない状況が発生することも考えられます。
制度の適用除外を設けることも視野に入れながら、しっかりと制度の設計を行っていきましょう。

※本記事の記載内容は、2022年6月現在の法令・情報等に基づいています。